中高年・シニアの自立と、その準備
大変な時代、会社に残る、会社を去る、そのいずれにせよ、自分の力で仕事を確保し、あるいは開拓しようとする位の積極性が、今、中高年サラリーマンに強く求められている。
つまり、リストラの波を乗り越え人生80年時代を生き抜く第一関門は「ビジネスライフにおける自立」ということである。
この仕事面における「自立」なしには、これからの物心共に豊かで自由な“自律”するシニアライフの構築は難しい。
ここでは、ビジネスライフにおける「自立」には何が必要か、そのための準備はどうするか。
まず、現在の会社の中にあって出来ることから検討を進めるものとする。
まずキャリアビジョンの再構築
(1) これまでは会社主導のライフプラン教育
大企業を中心に多くの会社でライフプラン教育 − CDLP(Career Development Life Planning Program:職業生涯生活設計プログラム)が行われてきた。会社主導で行われてきたこれまでのCDLPは「中高年になっても能力再開発等により会社への貢献度を高める努力を継続し、やがてハッピーリタイヤメント − 幸福な退職生活を迎える」というストーリーづくりに特色があった。
つまり、終身雇用制を前提として「定年までの自分を会社の中にどう位置づけるか、退職までに何を準備するか、定年後どう暮らすか」が主な狙いであった。
そのポイントは
・40歳代で実施する場合には、自分の適性を見極めさせる。
・会社におけるキャリアには様々選択肢があること、それをどう自分の適性に結びつけるかを動機づける。
・なお、選択肢の中には「転職」というコースも設定されるケースもあるが、かつてのそれは形式的なもので、それを選択するものは例外的な脱落者、あるいは「山っ気」のある社員とみなされるのがオチであった。
・定年前の実施では「定年退職」という事実を意識づける。
・定年までの収入、退職金、定年後の年金収入などを推計し、退職後の生活についてのシュミレーションを行う。
・シュミレーションに基づいて定年後の生活設計を行い、将来の生活に自信をもたせる。
・定年後の生活指導を行う。再雇用制度、OB組織などの案内、OBによる体験セミナーとコンサルティングなど。
この時代の人生設計プログラムは、「会社が名実共に終身雇用を保証し、定年後についても面倒をみる」という、人間尊重の旨とした「日本的経営」を背景としたものである。
例えば老後の経済生活についてのシュミレーション。
欲さえ出さなければ安定した人生設計が措けた。
即ち、定年まで収入、退職金、年金収入は多少の誤差はあっても凡その推計は出来たし、あとは家族構成、子供の教育費、住宅ローンの残高によって若干の差異が出る程度である。
単線型で安定した人生設計が会社によって保証されていた。
その頃の楽天的な人生設計プログラムの事例として、ある大企業のケースをかゝげる。
同社の場合は、年数段階によって次のようなライフプラン教育を行っていた。
・入社時:フレッシュプラン
・30歳:ヒューマンプラン
・40歳:シルバープラン
・45歳:リデザインプラン
・55歳:ゴールドプラン
キャリア計画は自分のためのものだ
現在、会社が雇用を保証する時代から、個人が自分で雇用を確保しなければならない時代へ、時代は確実に移りつつある。
その背景には、次のようなものがある。
・終身雇用を中心とした日本的経営が崩壊しつつある。
・一方、個人サイドからも自己実現重視の視点から雇用の流動化へのニーズも高まっている。
・企業が社員に求める能力も企業環境の変革に対応して変化し始めている。
与えられた仕事を一生懸命忠実にこなすだけで、いたずらに 年功だけを重ねて行く社員よりも、変化に対応したキャリアの開発が出来る社員を企業は求めている。
・平均寿命も伸び、いよいよ本格的高齢化時代に突入する。長期的にみれば、現行の年金制度の破綻も予想される。
人生80年とすれば、最後の20年においても何らかの形で働かざるをえなくなることも想 定され、老後の生活までふまえたキャリア開発も必要になる。
その結果、会社が敷いてくれた路線に乗った安全で確実なCDLPの設計が出来なくなってしまった。
つまり、生活設計を行う前に、まず自らのキャリアの抜本的な見直しとキャリアプランの再構築が求められることになったのである。
それは従来の形式的なものではなく、これからの生活を賦けた真剣なキャリアの再開発計画でもある。
しかも、企業はリストラブーム。
企業サイドが推進しているCDLP制度は、中高年層にとっては結果的には雇用調整策の一つにもなりかねない。
早期退職制度、転進援助制度、さらには役職定年制度などとも連動している。
日本IBM社が93年度から実施した「セカンドキャリア支援プログラム」はその代表的なものである。
こうした会社主導による「会社に云われたからやる」という計画では自分が目指す方向と違ったものになりかねないし、時期すでに遅し、ということも十分にありうる。
キャリアデベロップメントプラン(CDP)は自ら主体的に計画すべきものである。
自らで自らのCDPを再構築することは、現在の会社で仕事を続ける、今の会社を思い切って飛び出し転職をする、独立する、そのいずれを選択することにあたっても、決断の基本となるものである。
何を目指すか、キャリアビジョンを鮮明にせよ
中高年サラリーマンにとって、今、最も大切なことはキャリアビジョンの再構築である。
時代が変わった、会社も変わった、会社がサラリーマンに求めるものも変わってきた。
中高年ベテラン社員の何十年のキャリアもそのままでは役にたたなくなりつつある。
そこで、自分を見つめ直し、自らのキャリア目標を設定し直すことが必要となったのである。
キャリアビジョンとは何か。
自分がこれから何を目指すか、仕事という軸を中心におきながら自分の人生を考えることである。
単なる仕事を何にするかではなく、環境変化の認識と客観的自己分析に基いてこれからの自分の人生ビジョンを作り直すことでもある。
このキャリアビジョンが出来て始めて、これからの時代にふさわしい、そして自分のためのCDLP(職業生涯生活設計プログラム)の設計が可能になる。
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