団塊の世代はイノベーターを志せ
「団悔の世代」になってはいけない
戦後の主要世代をごく大ざっぱにくくると、高度成長期を支えてきた昭和一ケタ生れの経済戦士時代、団塊の世代、新人類という三グループに分けることができるだろう。
第一世代と第二世代である団塊の世代の間に安保世代をはさむ人もいるし、最近では、団塊の世代と第三世代の新人類との間にウルトラマン世代と呼ばれる三十代前半の世代を設ける説まである。
会へ民族移動した働き蜂である。
多くは現役を引退しているが、まだ企業トップとして老骨に鞭打っている人もいる。
そして第三世代は、第一世代の息子たちで、半分近くが一人っ子、長男である。
中間の第二世代、つまり1947年から49年生まれの団塊の世代は、工業化時代の最終ランナーである。
ナイスミドルなどと言われながらも、実は可処分所得が低く、家のローンと教育費で苦しんでいる。
消費動向と収入の関係をアメリカで調査した結果だが、低所得の若年層と高所得者層には高額商品への支出が高く、中間層の高額商品への支出が低いいわゆる「消費のUカーブ」が実証されている。
日本でも、多分に同じ傾向があると考えられる。
ところで、日本の産業社会にとって歴史的な変化は、過去三回あった。
最初の変化は幕末から明治にかけて起こり、二回目の大きな変化は、第二次大戦の敗戦後の焼け跡からの経済再建から始まり、高度成長に向かう途上である。
そして三回目の大きな変化が、工業化社会からソフト化社会、情報化社会への変化である。
ソフト化社会、情報化社会という第三の波への企業適応の遅れが、いまさまざまな形で日本の産業界、労働界を揺るがしている。
この産業社会の変化にともなう経営パラダイムの変換で、いちばん辛いのが団塊の世代であろう。
団塊の世代というのは辛い世代である。
大工業時代の最後の繁栄期に企業に入り、中高年から古い忠誠心を伝授され、自分も年功序列と終身雇用の恩恵に浴せるものと励んできた。
学生時代に「社会の価値観」に悩み、分裂してきた世代が、ここへきて今度は「会社の価値観」の大方向転換に遭遇している。
若いときは安月給に耐え、耐えれば給料も上がる、地位も上がると言われ、その日を楽しみにやってきた。
上には強固な会社人間のヒエラルキーがそびえ、大量の競争相手との激しい競争があることを自覚していたから、あまり意に沿わない仕事でも徹夜までしてやってきた。
「出る杭は打たれる。あまり目立つと損だ」と脅され、上司のやり方が違うなと思うときでもあえて異議を唱えず、工業化時代の尖兵として働いてきた。
いまの若者のように自分の個性を主張することもあまりできず、突出した能力を示す機会もそれほど与えられずやってきた。
そしてやっと管理職になって、さあこれから年功序列の有難みがわかってくるというその途端に、もう終身雇用は保障できない、年功序列ではやっていけない、年功序列は終わりだと宣言されてしまった。
怒りたくもなるだろうが、年功序列が潰れているのは事実である。
「いまは苦しいがいつか日の当たる時期がくる」と言われて耐えてきた社会主義国家の国民のようなもので、当てにしていた手形が突然不渡りになってしまったような心境かもしれない。
団塊の世代は、「団悔の世代」になろうとしている。
いま40代の半ばに達し、上場企業の部長年齢にさしかかり、部長有資格者があふれている状況だ。
ピラミッド型の組織が維持できた時代には、担当部長とか部付部長などのスタッフ部長の肩書きを与え、それなりの昇進も可能だった。
スタッフ部長でも、ライン部長並の待遇で過して乗り切ってきたが、もうそれもできない。
団塊の世代が50歳になる頃には、終身雇用は音を立てて崩れている。
現に、定年年齢を従来の60歳から55五歳に引き下げる企業も出てきているし、アパレル産業のなかには選択定年年齢を45歳に引き下げた企業もある。
HOYAのように55歳から30%の賃金カットを行う企業もある。
明らかに、団塊の世代をターゲットにしたシステム変更である。
また、管理職年俸制の導入は大きな流れとなり、あと2、3年もすれば、過半数の企業では管理職年俸制が常識になってくるであろう。
私は、よく冗談半分に、全共闘時代に2、3発張られているのだから、いまさら張られることを恐れることもないだろうと言って、団塊の世代を挑発しているが、なかなかその挑発に乗ってくれない。
激しい競争に萎縮してか、組織のなかで汲々としている団塊の世代が多い。
中高年の好きな「顔で笑って心で泣いて」という感傷に、団塊の世代は自分からすり寄ろうとしているようにさえ見える。
終身雇用の幻想にしがみつこうとする中高年に過剰適応して、一緒になってわが身の不幸を嘆いている。
そして、感性や創造力にすぐれている若者に、内心かなわないなと感じている。
団塊の世代は、嘆いている場合ではない。
中高年と同じ行動を取っても、なんのメリットもない。
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