会社の能力再開発支援を活用せよ
会社はまず能力再開発を求める
大競争時代、会社が中高年サラリーマンに対してとる道は二つしかない。
第一は「積極的活用」であり、第二は「排除」である。
自分のこれまでのキャリア特性を中高年者に分析してもらうと
「つぶしの効かないサラリーマンタイプ」
「会社からの評価が不当に低いスペシャリストタイプ」
「適当にやっていれば何とかなるさの自由人タイプ」
という層が本音部分では最も多い。
そして、この層は「今更キャリアビジョン再構築といわれても困る。
先が見えない、能力開発といっても限界がある」と考える傾向にある。
こうしたキャリアビジョンを持たない中高年層が会社としては最も対応に困る社員層である。
そこで、会社はキャリアセミナーなどを行い、キャリア目標の再構築とそれに向けての能力再開発をうながすことになる。
会社は「会社」という立場で、脱落する社員を少しでも救済しようというわけである。
会社の中高年社員に対する能力開発の狙いは次のように区分される。
(1) 同一職種内の業務の能力開発
業務の高度化・複雑化と技術革新などの変化に対応する能力再開発である。
全社員にも必要だが、中高年者の場合は対応が遅いし、時には拒絶反応もある。
また、中高年者の場合は能力の陳腐化を防止する意味もある。
(2) 類似性の低い職場への能力
開発リストラ、リエンジニアリングに伴い、部門間・職種間の配置転換がある。
出向・転籍でも職種転換のケースがある。
それに対応する転換教育と能力開発である。
(3) 職場環境変化への適応能力開発
出向・転籍・転職などにより、職場環境が大きく変わる場合である。
多くの場合、規模の大きい会社から小さい会社に移る場合が多く、意識改革を図る必要がある。
中高年者の能力開発ポイント
同一職種内の能力開発は、従来はほとんどの部分を企業主導のOJT(仕事を通じての企業内教育訓練)によって行われてきた。
しかし、最近は業務の高度化と内容の変化、技術革新とそのスピードの早さに適応するためにはOJTだけでは不十分で、Off・JT(企業外の教育訓練)を増やす企業が増えている。
情報化一つとってみてもOff・JTに一般企業の場合は頼らざるをえないことが多い。
中高年者についてみれば、中高年対象の独自のコースを設定し受講しやすくする必要がある。
また、既得の知識・技能・学習能力については個人差が大きく、レベルに応じたコースの細分化も大事とされている。
次に、職種転換のための能力再開発についてみると、40代の者は20代の者の2倍の教育訓練期間がかかるといわれ、中高年者の転換に対しては厳しい見方が多い。
しかし、転換する職種によって一概には云えないが、少なくとも教育訓練のやり方によっては、かなりの年齢までは転換は可能とされている。
さて、こうした中高年社員の場合、情報機器教育など新しい内容で、記憶量が多く微密な作業を含む教育についての学習速度は特に遅い。
しかし、中高年者の特性を十分に把握した上で、それに対する学習を実施することで、一定のレベルまでの能力開発は可能である。
中高年社員の意識面における主な特性は次の通りである。
(1) 自己概念が、自分中心・自己主導型人間へと移行している
(2) 経験の蓄積が増大し、それが学習への資源であると同時に、学習の抑制要因ともなっている
(3) 学習目的として、会社における役割をはたすためという意識が強い
(4) 学習結果を将来応用するよりも即時活用することに関心があり、問題解決指向的である。
こうした特性に対応する学習のやり方は「マイペース」重視である。
つまり、「教え込む」というやり方ではなく、「自己点検・自己学習」「マイペースの発見的学習」「実際的な課題と教材」などによる学習である。
これにより例えば情報機器教育においては中高年者の「パソコンアレルギー」を克服し、学習への定着率・習得速度を高めるなどの効果をもたらしている。
職場環境変化への対応ポイント
出向・転籍・転職が決まってからの能力再開発では遅い。
こうした事態を想定したキャリアプランをつくり、もっと早い時期から準備学習をするのが基本だという意見がある。
これは正論であるかもしれない。
しかし、終身雇用を前提に入社し何十年もサラリーマンとして過ごしてきた中高年層にはこの考えがなじまない。
しかも、リストラという嵐に巻き込まれ、ある日突然にこうした事態に遭遇したというケースが最近目立って多くなっている。
定年退職者は別として心構えも、準備もない。
こうしたリストラの対象となった中高年社員に今言えることは、
第一には「企業エリート意識を捨てるなどの意識改革」、
第二には「これを機会に自己啓発と能力に努めること」。
つまり、「一歩後退、二歩前進」前向きに行動を起こして下さいということである。
中高年者の出向・転籍・転職の多くの場合は、親会社から子会社・関連会社へ、大企業から中小企業への移動である。
こうした場合の基本的心がまえとして次のようなことがあげられる。
・エリート意識を捨てる……親会社などかつての会社の方向を向かず、自分が上だという姿勢はとらない。
また、常に柔軟な思考を持ち、状況に自分をあわせていく。
・新会社の特性の理解……事業内容、経営特性、長所・短所などを客観的に把握すると同時に、まず相手会社とその社員を理解することから始める。
・相手会社に溶け込む……1人何役、中小企業には大企業と違った企 業風土がある。
組織体制、仕事の分担、責任権限、人間関係などの 違いをつかみ、ひとまずそこに溶け込んでみることだ。
本当の自分を発揮するのは実績をあげてからでも遅くはない。
会社は中高年を簡単には排除できない。
一通り救済策として能力再開発の機会と時間を与えてくれる。
それを素直に利用することだ。
今の会社に残る、出向・転籍・転職する、独立する、いずれのケースでもビジネス生活をする以上必要なことだ。
損はない。
外部機関による教育コースも活用できる
Off・JT(企業外教育訓練)が中高年社員の能力開発に重要だと述べたが、参考までに外部機関による教育訓練コースの代表的事例を紹介しておく。
生産性本部の「専門能力開発講座」「キャリア・リフレッシュメントプログラム(中堅・中小企業経営幹部養成講座)。
これは自らの能力再開発だけでなく、転職の場合の準備講座としても利用されている。
早期退職者優遇制度を推進している企業には対象者の受講を義務づけているところもある。
受講料の会社負担は当然である。
中高年者個人としては、労働省の外郭団体である雇用促進事業団が実施している「職業能力開発講座」が負担が少なく効率的。
主対象は55歳から65歳の中高年で、自分のこれまでのキャリアを磨く「マスターコース」と経験のない技術を身につけるための「構造転換コース」がある。
無料であり、セミナーの内容、期間を個人に合わせるなど、きめ細かな対応が特色といわれる。
会社による支援を出来るだけ活用しつつ、積極的に外部機関も利用すべきである。
会社はどこまで頼れるか、見極めをつけよ
会社は、キャリアプランの再構築と能力再開発、中高年再雇用制度などの中高年社員に対する思いやり対策を示す一方で、雇用調整のしたたかな手を打ってくる。
年俸制といった実力主義の賃金制度への転換、組織の簡素化と役職の切捨て、役職定年制の導入、早期退職・転進援助制度の導入、退職金・年金制度の改訂などである。
役員、役員待遇のスペシャリストなどの実力者を除いての一般社員にとって会社はますます住みにくいところになって行くようである。
仮にリストラを逃れたとしても定年まで残るとすれば相当の我慢を強いられることになる。
また、残ったとしても経済的メリットも次第に少なくなる。
中高年サラリーマンは、人事制度面からも
・実力社員として会社に勝ち残るか
・我慢に我慢を重ねて、ただひたすら会社にしがみついて生き残るか
・新天地を求めて転社、あるいは独立する
という三つの選択肢のうちのどれを選択するか、決断を迫られているのである。
以下、中高年社員を主対象とする。
人事対策の現況について概観するものとする。
役職定年・任期制でリストラを迫る
中高年社員リストラに狂奔する企業の実態とは別に、社会的には高齢化時代を迎えるにあたって定年年齢の引き上げが要請されている。
企業側からみれば定年延長という措置は、役職者の高齢化、人件費の増大、人事の停滞を招くといった問題がある。
そこで、こうした弊害を防止し組織に活力を持たせようとする人事対策が、役職に任期・定年を持たせようとする制度である。
このうち、役職定年制は役職ごとに、退任しなければならない年齢を設定、その年齢に達した時に役職を退任するという制度。
一方、役職任期制は一定役職についてから退任、あるいは昇格までの期間を限定、その期間が過ぎれば年齢に関係なくその役職を退任するというものである。
制度としては、前者の役職定年制が一般的である。
役職定年制の狙いは次のようになる。
(1)リストラ……肥大化する中高年管理者のスリム化と人件費の圧縮
(2) 組織活性化……中堅以下若手社員の働く意欲を刺激し、生産性を向上させる
(3) 人材育成……若手社員に目標を持たせ、人材の早期育成を促進する
この役職定年制は、企業が中高年の賃金と雇用を抑え込むことをねらいとしており、いやなら転退職を迫るというもので中高年管理者層にとってはかなり過酷なものといえる。
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