シニア・団塊世代は求められている人材を把握せよ
戦国時代のエリートと現代のエリート
リーダー、あるいはリーダーシップは、古くも新しいテーマである。
団塊の世代以上ともなれば、管理職に就いている人も多く、求められるリーダーシップとはなにか、求められるリーダー像とはなにかに心を砕く。
不透明な時代になればなるほど、そうしたリーダーシップというものは見えなくなる。
私も、
「いま求められている人材とはなにか、エリートとはなにか」
「求められているリーダーシップとはどういうものか」
という質問をよく受けるが、こうした抽象的な質問には、実のところ答えようがない。
というのは、企業の業種、置かれている状況や環境、規模、なにを目的としているかなどの条件によってそれこそ千差万別の解が出てくるからだ。
この種のものでサラリーマンに人気があるのは、気配りや人間関係術、悪く言えば社内遊泳術や社内力学術などを説くハウツー本であったり、戦国時代の武将や補佐役、太平洋戦争時の名将や参謀の言動を書いた本であったりする。
しかし、こうしたものから、サラリーマンが求める現代の人心掌握術、現代のリーダー像は浮かんではこない。
サラリーマンはそこの点を誤解している。
いまは「企業は戦時である」と言い、「企業戦国時代」とも言う。
そうした連想から学ぶべき点があるという主張もなるほどと思いがちだが、それらはあくまでもフィクションにすぎない。
たとえば、戦国武将が、武力や人望や人気だけで生き残ったというのは、どう考えても理解できない。
戦国の世の実力主義というものは、命を守るために何人もの影武者を立て、居場所も本当の側近しか知らないような苛赦誅求なものである。
現代のような成熟社会に生まれたわれわれにはとうてい想像できるものではない。
現代の企業競争、ポストレス社会には厳しいものがあるが、ひとつの判断の失敗が落命につながることはない。
命まで取ろうというのではないのが、現代の企業競争である。
いささか楽観的に言ってしまえば、肩叩きされても、転職に失敗しても、それがすなわち死を意味するものではないということである。
企業観も人生観も国家観も世界観も大きく変わっている。
全世界的なパラダイムが変換を遂げているのに、ことリーダー観だけは変わらないということはあり得ない。
その点を忘れないことである。
そうした戦国武将や名将・参謀ものは、やはり知的な刺激性に満ちたホラ話として読むべきである。
そこに書かれたきれいごと以外のところに、サラリーマンにとって本当に役立つどろどろした部分がある。
なにかを学ぼうとしても、畢境、現実とかけ離れたお話にすぎないと悟るべきである。
逆に言えば、リーダー諭がいつの時代でも変わらず語られる点にこそ真実がある。
普遍的なリーダー像は存在しないということである。
大事なことは、時代が変われば、求められる人材も変わるということである。
あえて言えば、いつの世にも通用する人材などない。
早い話、戦国時代に活躍した戦国武将を現代に持ってきても、果たしてなにができるか。
戦国の世をたった一人で切り拓いていった天才的な武将・織田信長は、現在の管理社会のなかでは、芸術の世界にしか自らを見出だせないであろう。
徳川家康は、せいぜいうまくいって財務次官程度であろう。
逆に、現代のエリートが戦国時代にタイムスリップしても、なにができるか。
これもたいしたことはできないだろう。
時代と状況が大きく違うのだから当然である。
言ってみれば、求められる人材、エリートはつねに状況エリートだということである。
企業のエリートとは、時代の環境、業種、企業のライフ・サイクル、構成員数など、そのつどの状況に応じて変質する。
A社のエリートが必ずB社でもエリートになれるわけではないし、いつまでもA社のエリートであり続けられる保障もない。
エリートとはつねに個別的なフローの存在であり、ストックの存在ではない。
その時宜に適した能力を発揮しない存在は、エリートとは呼ばれない。
能力とは「持ってなんぼ」のものではなく、「発揮してなんぼ」のものである。
普遍のエリート像などは存在しない。
ただし、現代のエリートを考えた場合、少なくとも感性が豊かでなければならない。
たとえば、女性の社会進出一つとってもそうだ。
女性を認められる管理職は、「センスのいい人」「感性豊かな人」である。
女性の社会進出を認められない管理職は、時代を読むセンスがないし、古い観念の持ち主である。
新人類を一概に見て、彼らは働こうとする意思がないと見るのも、同じ間違いを犯している。
彼らは、つまらない仕事、自分を楽しませてくれない仕事にはあまり興味を持たない。
その反面、自分の好きなことには徹夜も辞さない。
たとえば、コンピュータを使うことに彼らはアレルギーがない。
その面白さを知っている。
彼らにコンピュータを使って統計的な処理ばかりをさせていないで、その知識を生かして一つ自分で仕事を作ってみろぐらいの指示をする気持ちが欲しい。
そういう弾力性がこれからのリーダーシップであり、感性豊かなセンスのいい管理職がこれからの管理職である。
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