「自立」に向け、中高年サラリーマンは自分を革新せよ
再び、自分を「弱者」と思い込んでいる中高年サラリーマンへの提言である。
昨日までの自分を何故変えられないか
現在の会社に踏みとどまる、転職する、あるいは独立する、そのいずれにせよ、中高年社員を取り囲む全ての条件は、昨日までの「会社ぶら下がり型社員」に対して、ビジネスマンとしての「自立」とそのための「自己革新」を迫っているといえる。
その、中高年サラリーマン自分自身はどうだろうか。
キャリア目標 とそれを達成するための計画はないとしても、多くの人には将来自分がやりたい仕事・職務は少くともあるはずである。
一方、会社側からは、新しいビジネスコースの選択が求められている。
また、そのための能力再開発制度、転職・独立に対しても様々な支援制度を準備していてくれる。
様々な角度からみても、自立しなければならない条件は揃っている。
自立に向けて自分を変えなければならないこともわかっている。
だが、いざ実行となるとそれがなかなか出来ない。
特に、自分を変えることに抵抗感があり、結局はそのうちに自己革新の気力を失い「会社ぶら下がり型人間」に後戻りする。
場合によっては会社も辞め,
ビジネス社会から脱落する……このようなケースも見受けられよう。
これには、様々な理由は言える。
例えば、中高年の頑固さに起因するというのもその一つ。
しかし、その頑固さの裏側にはすでに過去のものとなったかつての栄光へのこだわりがあり、会社の同僚、部下、家族など周囲への目を気にして自分を変えられないでいることも多い。
これと同じことは「自分はOA機器などをうまく使いこなす器用さはないし、また新しい技術に対する能力がない」と思い込んでいることにもいえる。
これも実は、失敗と周囲の目を怖れて新しいものに挑戦する勇気がないだけなのだ。
このように出来ないことへの自己弁解の理由は山程ある。
しかし、それは結局、過去に甘え、弱い自分に溺れていることなのだ。
言いかえれば、会社、家族等に対して「自立」できず、自分に対しても「自律」することが出来ていないということである。
それでは、この壁を打破するにはどうしたらいいかである。
自立人間の特性と行動
それでは、どうするんだという前に、「自立」しているビジネスマンの人間像とその行動特性を整理しておきたい。
これについては、自己啓発のためのセミナー、著書などで、中高年サラリーマンの方々はよく勉強し、すでによくわかっていることかもしれない。
だが、問題はある。
セミナー会場等ではその通りだと聞いていたものの、一旦会場の外に出ると他人事のように忘れてしまう人が多い。
そして、
「自立に成功した人の特異なケースであって普通の人間には出来ることではない」、
あるいは、
「自分には他人を押しのけてまで自分を貫くような生き方は出来ない。 自分とは生き方が違う」と考える。
これは、いわゆるインテリといわれる中高年ホワイトカラーによく見かけられる。
しかし、中高年サラリーマンをめぐる情勢には逼迫したものがある。
単純に反発することはやめて、この際素直に耳を傾け、その中からこれからの中高年サラリーマンの生き方についてのヒントを学ぶべきである。
そこで、ここでは数多い自己啓発関連の著書の中から特徴的なもの二つを紹介する。
第一は、「自分のための危機管理学」(牛場靖彦著)から「自立人間のモデル像」。
第二は、「戦略行動学のすすめ」(大西啓義著)から「自立に向けての行動の進め方」である。
自立人間のモデル像
牛場氏によれば「独立」あるいは「自立」する男の条件とは、「いかにして現状打破思考ができるかどうか」であるとしている。
即ち、現代社会は変革に向けて揺れ動く時代であり、揺れ動くがゆえにリスクや不確実性が高まる時代でもある。
そして日本的経営の三本柱と称された年功序列、終身雇用、企業内組合も崩壊に向い、ビジネスマンにも危機が迫っている。
サラリーマン一人一人にとっても危機管理が重要な時代となった。
そのためには、自らのものの見方・考え方を思いきって変革させ、人生に対する新しい価値観を創りだしていくことが求められる。
従来の常識を破って新しい考え方を創りあげて行くには、自分の心の中に人生に対するしっかりした理想像を持つ必要がある。
こうした理想像が確立してくると、少々のことではまわりの圧力に屈しない強い抵抗を示すことができるようになる。
こうした自立型人間を牛場氏は「�X・S・O・P人間」と称している。
- �X(Vitality)=ヴァイタリティ
- S(supeciality)=スペシャリティ
- O(originality)=オリジナリティ
- P(personality)=パーソナリティ
のことである。
人間には「健康の維持・増進」、「身の安全の確立」、「経済的充実」という三つの安定希求がある。
それを実現するためには�X・S・O・Pという四つの要素が必要であり、それがあればいかなるリスクに直面しても動じることなく、また人間性を喪失することなく難局を乗り越えて行くことが出来る。
つまり、「人生の勝利者」となることが出来るというのである。
少し詳しくみると、人間には「フィジカル」・「メンタル」・「ソーシャル」という三つの健康があり、その三つが揃って始めて本当の健康、つまり「トータルフィットネス」を完備しているといえる。
このトータルフィットネスの根源となるものは「ヴァイタリティ」である。
こうしたトータルフィットネスを備えることが出来れば、行動に、そして心にもゆとりが出てくる。
仕事も楽しくなり、他人と差別化する「スペシャリティ」に磨きをかけることが出来る。
スペシャリティが高まれば、それまでの知識・見識を一層深めながら、さらにその上を目指してその人独自の「オリジナリティ」形成に積極的になる。
このように、�X・S・O・Pの三要素がそろい、それぞれが強固となった時に始めて、組織の内外に対して「自立」できる人間が誕生するというのである。
つまり、「パーソナリティ」の確立である。
自立に向けての行動の進め方
大西氏の「戦略行動学のすすめ」によると、人生とは楽しく生きることが原点であり、それに基づいて人生の最高戦略「ライフ・アイデンティ」を確立することが、自立への第一歩になるとしている。
そして、現代は変革の時代で個人リストラが重要であり、人生をエンジョイするため全てを前向きにとらえる「陽転思考」により自分の行動を変えて行く。
また、「脳力開発」は今からでも遅くなく、陽転思考とこの脳力開発をベースに自己変革は可能であり、そのために次のような行動指針を提唱している。
自己変革のための行動指針は15あるが、大きくは四つの基本指針に集約される。
(1) 精神姿勢の確立 − やる気の充実
(2) 思考方法の整備 − 思考判断力の向上
(3) 実際知識の拡大 − 情報の拡大・発展
(4) 全脳開発 − 器の拡張
「脳力」開発には限界がない
肉体的能力は年令と共に衰えるが、知的能力には際限がない。
特に高度な情報処理に対する脳の柔軟性は非常に高く無限の発展性を秘めているといわれる。
つまり、「脳力」の開発には限界がないのである。
大西氏によれば、中高年の能力再開発に際しての最大の問題点は、自らの能力に対して自分で自分勝手に限界を設けてしまっていることだとしている。
「脳力」には無限の可能性がある。
中高年になってからでも、その開発は遅くない。
その代表例としてよくあげられるのは、江戸中期の人、井能忠敬。
彼は50才を過ぎてから日本地図作成のため測量を志し、世界最高の測地技術を身につけている。
さて、大西氏によれば、人間は誰でも140億個の脳細胞を持っている。
ところが、日常生活で実際に活用しているのはそのうちの3%、残りの97%の脳細胞は使われることなく休眠している。
しかも、この140億個というのう細胞の数に個人差はない。
つまり、素材としての「脳力」は誰も変らないのだとしている。
異なるのは、シナプスの発達である。
シナプスは、細胞からの信号を伝達する役割を果たす神経細胞をつなぐ接続点にある。
このシナプスは手、足、口を使って行動することにより、また脳を使うことにより発達する。
即ち、思考し行動し続けることにより、脳力の開発には限界がないというのである。
戦略行動学15の指針
1 精神姿勢の確立…やる気の充実(原動力)
(1) 主体性…何が何でも主体的に行動する姿勢が原点
(2) 進歩発展性…同じ行動をするなら進歩発展・現状打破の姿勢で
(3) 協調性…自分もよし、他人もよしの姿勢をつくれ
2 思考方法の整備…思考判断力の向上(ソフトウェア)
(1)中心思考・戦略志向…中心志向でいち早く問題の焦点をつかむ
(2)両面思考・対比思考…正しく状況判断するために両面思考を習慣化する
(3)多角度思考…立場観点を整理し多角度思考で自在な戦略を生み出す
(4)確定思考…情報が氾濫する時代、確定的要素から出発して物事を考える
(5)具体思考…突っ込んだ具体思考で、向上のための行動につなげる
3 実際知識の拡大…情報の拡大・発展(データ)
(1)体験知識・連係知識…知識はすぐ使う、活用してこそ智恵になる
(2)異分野多種多様情報…知的やじ馬精神で、できるだけ多くの物事に首を突っ込む
(3)人脈ネットワーク…信頼関係に基づく真のヒューマンネットワークをつくる
4 全脳開発…器の拡張(ハードウェア)
(1)プラスイメージ…目標達成に成功した時の自分の姿をハッキリとイメージする(プラスイメージの力が脳力開発の原点)
(2)瞑想…瞑想こそが、何事にも捉われない本来の自分にめぐりあう方法
(3)心身の健康…自然の理にかなった健康的な生活習慣をつくる
(4)感動・感激・感謝…「一日一驚」で、感謝の心を養う
資料 「戦略行動学のすすめ」大西啓義著(PHP研究所刊)出典
状況打破の意志が自分を変える
さて、ここで再び、弱者中高年サラリーマンの現実に戻ろう。
自分を弱者と思う中高年者の心理を分析すれば次のようになるまいか。
「自立」出来ている人間のモデル像、「自立」に向けての能力再開発の方向性はわかった。
だが、問題は残る。
みんなわかっているのに、どうにも、自分を変えられそうにもない。
自分は「自立」とはほど遠いダメ中高年サラリーマンなのだ。
何故、自分を変えられないか。
ここで、冷静に考えてみよう。
これまでは、会社への甘えが許されていたのだ。
悪いことさえしなければ、定年までは会社に置いてもらえた。
だが、状況は大きく変換した。
企業はリストラの波に呑み込まれ、従業員中心といわれた日本型経営システムは崩壊した。
中高年サラリーマンの多くは、安定を求めて就職したはずの会社から出向、転籍、さらには、早期退職に追い込まれるなど人生の危機に直面している。
このク況こそ、自分を「自立」の人間に変えるキッカケであり、チャンスでもある。
また、そう考え、そう行動しなければあなたには救いがない。
はっきりしていることは、「自分は弱い立場にある中高年サラリーマン」という甘えは、会社に対しても、自分に対しても許されなくなっていることだ。
追い込まれた状況を打破するのは自分以外にない。
最も大事なことは、この切迫した状況を自分で解決するという強い意志を持つことである。
また、昨日までエリートとしてふるまってきた中高年サラリーマンの場合、今日の切迫した状況を家族にも誰にもなかなか話せないことが多い。
しかしこの期に及んでは黙っている訳にはいかない。
周囲の人に説明するといっても、今自分を置かれている逼泊した状況の説明だけでは前向きの議論にはならない。
その前に、自分で自分を「裸」にし、そこからスタートする人生戦略を考えておくことが必要だ。
一体、自分とは何だ。
会社という特権を捨てた場合、自分にはどんな能力があるか。
本当に自分でやりたい仕事は何か。
そして、それを実現するためにはどうするか、人生計画の再設計である。
これがなければ、家族や周囲の協力は得られず、前向きにことは進まない。
また、転職、自立するにしても、それがなければ自分のセールスポイントが明確にならない。
そして、行動である。
「陽転志向」、前向きにやってみることである。
現在の自分は、現在の自分以上ではない。
裸の自分で再スタートすればこわいものはない。
あとは人生の目標に向けて能力を向上させて行くだけである。
また、行動の中で、自分を「自立人間」へと変えて行く。
最初は演技でもよい。
自ら求めている人間としてふるまってみることも時には必要だ。
こうした一つ一つの行動の積み重ねが、「会社従属型人間」を主体性のあるビジネスマンへと変えて行く。
「わかっているが、どうにもならない、自分は立場の弱い中高年サラリーマン」 などと云ってはおられない。
状況は切迫している。
この追い込まれた状況を人生再スタートのエネルギーに変換。
前向きな行動と実際の仕事を通じての自己革新により状況を打破して行くことだ。
さあ、会社人間であった過去と断絶し、「自立」に向けての出発だ。
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