個大事業による独立
経験がなくても独立は出来る
専門分野での独立をはたせなくても、独立のチャンスはまだいろいろある。
先に示した日本ユニシスの事例でも、ラーメン店、コンビニエンスストア、クリーニングチェーンから碁会所に至るまでの様々な個人事業が独立のために選ばれている。
これらの多くはこれまでのサラリーマン生活とは無関係で、自分にとって全く経験のない事業分野への挑戦である。
こうした個人事業の場合、運営が単純であるもの、単純とはいかなくても運営がシステム化され、業務もマニュアル化されている事業が多い。
つまり、事業ノウハウ、事業経験がなくても、フランチャイズチェーン等に加入することにより、比較的容易に事業をスタートさせることが出来るということだ。
あとは、事業資金の問題となる。
それに、その事業に使える土地と建物といった経営資産があればなおよいということになる。
フランチャイズにより参加しやすくなった個人事業
フランチャイズシステムとその特性
フランチャイズシステムとは、商品やサービスのフランチャイズ権を持つチェーン本部会社(フランチャイザー)が加盟店(フラン チャイジー)にブランド使用権・販売権を与え、商品・資材の供給 や経営指導を行う事業形態のことである。
業種をみればコンビニエンスストア、スーパー、専門店などの小 売業、ファーストフーズ、ファミリーレストラン、ホテルなどのサービス業、不動産業に至るまで、多くの業種・業態にわたっている。
有名なところでは、セブンイレブン、マグドナルド、デニーズ、つぼ八、ダスキングループなどがすぐあがってくる。
事業規模をみても、大は大型スーパーのダイエー、ホテルのホリディ・イン、小はラーメン店、DPE店までというように多彩である。
フランチャイズは発展しつづけている
日本フランチャイズチェーン協会の調査によれば、日本のフランチャイズは依然成長を続けている。
チェーン数ではかなり伸びており、店数、売上高ともに不況下にあっても成長傾向を示している。
業種別にはサービス業の伸びが目立っている。
なお、業種別にみたチェーン分布をみると、
売上ではコンビニエンストアは3兆94億円で圧倒的な1位、
次いで家庭電器用品、カー用品、総合スーパー、ハンバーガー・サンドイッチの順となっている。
店舗数では学習塾・各種教室・スポーツクラブは29,000店で第一位、
次いでコンビニエンストア22,900店、以下クリーンサービス、すし・弁当・おにぎり、ラーメン・ぎょうざの小型事業が続いている。
こうした多彩な業種・業態にわたるフランチャイズシステムの発展は、脱サラなどの「素人」でもこれらの個人事業への参加を容易なものとしている。
フランチャイズ加盟の進め方と留意点
個人事業による独立を図る場合、特にノウハウや経験がないとすれば、まず、フランチャイズへの加盟を検討することが多い。
そこで、フランチャイズ加盟の進め方、選定・加盟にあたっての留意点など、以下に要約しておく。
フランチャイズ加盟までのステップ
- (1) 加盟募集資料収集と検討
- (2) 加盟有力候補選定
- (3) FC本部訪問(事前調査。概要把握)
- (4) 事業への適性、資金力などの検討
- (5) 既存加盟店訪問
- (6) 加盟申し込み
- (7) 本部面接
- (8) 立地選定
- (9) 事業計画書の作成・検討
- (10) 加盟契約書の確認
- (11) 加盟契約書に調印
- (12) 店舗工事・従業員の教育研修
- (13) 開店準備
- (14) 開店
(注)以上は小売店、または飲食店を想定
加盟にあたっての留意点
加盟にあたって、最も留意しなければならないのは、契約内容のチェックと加盟店訪問による実態把握である。
特に、契約書はPCシステムにおける本部と加盟者の関係を全て網羅しているものであり、加盟後の変更は許されない。
納得がいくまでの念入りなチェックが必要である。
また、加盟店に対する訪問調査はチェーンの実態を把握する上での最も有効な手段である。
本部の説明だけでは把握できない具体的事実も分かる。
個人事業成功・失敗のポイント
このようにフランチャイズシステムの発展もあり、個人事業はずいぶんと親近感のある始めやすいものとなっている。
しかし、このことを逆に考えてみると、「失敗」という落し穴にも簡単にはまり込みやすくなったということでもある。
そこで、フランチャイズ加盟も含めて、個人事業の成功・失敗のポイントを次に考えてみることにする。
生き甲斐となる事業を選ぶこと
第一のポイントは、生き甲斐となる事業の選択である。
つまり、これから始めようとする事業そのものに意義を感じていること、その仕事が好きであること、できればその仕事が得意であることである。
中高年になってからの独立である。
好きであり、生き甲斐となる事業の選択が最も重要である。
格好のいい事業、楽な仕事、儲かる事業というだけでは長続きはしない。
最初は順調であっても、いつかは経営の危機が訪れる。
また、スランプに落ち入る時もある。
そんな時、その仕事が好きであり生き甲斐に感じていなければ、それを乗り越えることは困難である。
1年程前、私の若い友人が脱サラし、リサイクルショップを始めた。
リサイクル事業は市場も未成熟、ショップ運営のノウハウも整備されていないこれからの事業である。
そしてリサイクルというと時代の先端的なイメージがあるが、事業としては決してキレイナ商売とはいえない。
すでに、その友人はいくつかの困難に直面している。
まず、この未知でありキレイともいえない事業を始めるにあたっての奥さんの説得。
そして、始めてはみたものの地域の人々にはわかってもらえず、売れない日々も続いた。
こうした困難を乗り越えて事業を軌道に乗せることが出来たのも、やはりリサイクルという仕事が好きであり、生き甲斐を感じているにはかならない。
恰好にこだわるな
「恰好」をつけるなということは、中高年の独立に際して重要な教訓である。
一般的に、多くの脱サラ組が最初につまづくのは、形式にこだわるからとされている。
中でも、中高年者の場合は過去の栄光や地位へのこだわりもあり、店舗、事務所等への投資が過大になる傾向に ある。
事業にとって必要な投資はけちってはならないが、必要以上の店舗の内外装、オフィススペースなどへの投資は、資金がよほど潤沢 でもない限り行うべきではない。
そして、金は大切に使え
脱サラ中高年の多くは、自分の退職金を事業資金として注ぎ込むことになっている。
退職金のようにまとまった資金が手許に入るのは、ほとんどの人にとって生涯二度とはない。
適確な事業計画、資金計画でこの金は大切に使わなければならない。
ここで一つ気になることがある。
早期退職優遇制度の退職者の独立への影響である。
第一には、この制度により独立をいそがされることになり、慎重さを欠いた安易な事業選定になりはしないかという懸念である。
第二にには、退職金の割増加算の問題。
資金が増えるのはよいが、予定以上の資金収入の結果、独立にあたっての気の 緩みが生じ、投資面、運営面での甘さが出はしないかという懸念である。
ただし、こうした懸念が生ずるのは、早期退職優遇制度等の恩雇にあずかれる大企業に勤めていたごく一部のサラリーマンだけで磨 る。
中小企業では、逆の事態が、今おこっている。
例えば、中小企業退職金共済制度加入企業の場合は資金運用利回りの引き下げに伴う制度改訂が問題となっている。
改訂前に比べて 退職金は2〜3割の減額なるという。
端極な計算例では、改訂前1,760万円の退職金が改訂の結果、35%減の1,150万円になるケースも出てくる。(全労連が労働保険審査会に審査申し立て中)
このように、勤める企業によって、退職金も計算通りならず、あてにならない。
退職金は大事に使わなければならない。
狙いとする事業は裏の裏まで調べる
これから始めようとする事業については、裏の裏まで知る必要がある。
そのたりには、見る、聞くだけの調査ではなく、自分で実際に働いてみるといったより突っ込んだ具体的調査が大切である。
以下、フランチャイズ加盟を例として調査の手法を検討する。
フランチャイズシステムにより個人事業は参加しやすくなったとはいったが、フランチャイズを主催する企業は千差万別である。
中には、加盟金詐取目的のチェーン、倒産するコンビニエンスチェーンがあるなどリスクもつきまとっている。
それだけにいろいろな角度から調査し、納得できる事業、信頼できる提携先を探し出すことが独立成功の第一歩といえる。
フランチャイズ加盟にあたっては、本部の説明を聞く、既存の加盟店訪問しヒアリングするなどのステップがあった。
特に、加盟店については単にヒアリングするだけでなく、実際にそこで働くことをおすすめする。
「自分は将来このチェーンに参加することを計画しており、その勉強のために修業させて欲しい。 時給はアルバイト900円の半額でもいい」などと頼みこむことだ。
実際に働いてみると、事業全体を具体的に把握できるだけでなく、そのチェーンの裏にあるものまで知ることができる。
そして、それだけでなくその事業に対する自分の適性もわかり、自分が人生を賭けるに価いする事業であるかどうかの判断もつく。
即ち、事業の単なる外見や、チェーン本部から提示される事業のモデル数値だけでは、その事業の可否についての判断はつかない。
その事業の現場に実際立って始めて、その事業の姿が本当にわかり、その事業を行うべきかどうかについて正しい判断が出来る。
事業は経営である
好きだから、社会的意義があるからといっても、事業は道楽でも ボランティア活動でもなく「経営」である。
企業としての採算を守り、経営を維持するという「経営としての事業の進め方」をしなければならない。
当然のことだが、これは意外に難しい。
これは、個人事業のみならず、スペシャリストとしての独立、ベンチャー企業の創業等にも共通するものである。
いずれ別の機会でさらに詳しくとりあげるものとする。
フランチャイズ事業事例と脱サラ中高年オーナーの課題
この項の最後に、中高年者の希望も多いあるフランチャイズ事業の事例で、FC主催企業側からみた、脱サラ中高年オーナー者の課題を紹介しておく。
紹介するのは、サンドイッチチェーン「日本サブウェイ」のケース。
米国式のサブマリン型サンドイッチが主力商品で、北米を中心に1万店のショップを展開、日本には92年に上陸している。
同チェーンの場合は、脱サラ組の個人オーナーが3割で、他のファーストフードチェーンに比べると個人参加が多い。
個人オーナーが多いのは、調理が簡単で体力を要しない、初期投資が他のファーストフードチェーンと比較すると少いなどの理由による。
投資額が少いのは、火・油を使わずに調理が出来るので厨房設備の投資負担が少いことによる。
ちなみに、加盟にあたっての初期投資の目安は契約金を含めて2,500〜3,000万円。
借店舗の場合は保証金などを加えて3,500〜4,000万円といったところである。
脱サラ組の多くは、金融、電機・コンピュータなどからの転進者。
飲食業経験者はほとんどいない。
また、年代的には20代後半から30代、40代、50代と幅広い。
20代、30代は独立への夢の結果であり、40代、50代になると企業のリストラを契機にという脱サラ組が多い。
しかし、共通していることは、組織の中で自分を活かして行くことへの限界に突き当り、独立への道を求めたということである。
フランチャイズ主催企業側からみた脱サラオーナー、特に中高年オーナーについての課題は次のようになる。
永年のサラリーマン生活に染みついた組織への依存心が、真の自立を妨げているというのだ。
組織という信用の後ろ盾は全てなくなった。
自分で商売をやるということの責任の大きさ、独立して成功するチャンスの裏には必ずリスクを伴うなど、頭ではわかってはいるが、いざとなると腹をくくった行動が出来ない。
問題がおこれば、すぐ本部に依存するか、どこかに責任を転嫁しようとする。
つまり、事業のオーナーとしての自立がなかなか出来ないということである。
パート・アルバイトの活用、資金繰りのノウハウなど技術的面は時間をかければ体に叩き込むことが出来る。
しかし、永年の習慣で身体に染みついて頑固にはなれようとしないのは「組織への依存心」だとしている。
ともあれ、6ヶ月、1年、人によってもっと長くかゝることもあるが、人間には順応性と蘇生力があり、最終的にはみんな事業オーナーとしての自己変革に成功しているとは言っているのだが。
コンサルタントの仕事をしているとよく聞かれる言葉がある。
「何か、楽にそして確実に儲かる事業はないか」という言葉である。
それにはこう答えることにしている。
「黙っていても儲かるような事業はない。
儲かるように仕事は自分で創って行く以外にない」。
つまり、サラリーマンで駄目だっから、安易に独立しようと考えないことである。
そして、独立すると決めたら、それに向かって自己革新を行い、サラリーマン時代以上の努力をする覚悟が必要だということである。
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